「明日の記憶」萩原浩
急速に物忘れが激しくなった広告代理店の営業部長である佐伯。
会話中、俳優の名前がでてこなかったり、買い物に出かけようと車に乗った瞬間、家の鍵をかけたか不安になったりと、最初は些細な物忘れだったが、症状は日に日に酷くなり、とうとう仕事の約束まですっぽかしてしまう。
意を決して精神科に診断に行くが、そこで告知された診断は若年性アルツハイマーだった。
恐ろしく、悲しく、そしてとっても良い小説でした。
人間関係は記憶がなければ成り立たない。
頼りになると思う気持ちも、腹立たしいと思う気持ちも、すべて記憶があるからこそ持てる感情です。
そして愛しいと思うことも、やっぱり記憶があるから。
積み重ねてきた人生が徐々に欠落していくことへの恐怖を、一人称ながら抑えめの筆致で描かれています。
この本を読んで感じることは一つでした。
当たり前だけど、人間はいつか死ぬと言うこと。
僕だって残された時間は、多くても後50年くらい。
幸せな記憶を積み重ねていける時間が、どれだけ限らない。
もっと毎日を一生懸命に生きていかなければ。
そんな気持ちを新たにさせられる一冊でした。
特に良かったのはこのくだり。思わずページの端を折ってしまいました。
記憶は自分だけのものじゃない。人と分かち合ったり、確かめ合ったりするものでもあり、生きていく上での大切な約束事でもある。(中略)たった一つの記憶の欠落が、社会生活や人間関係をそこなわせてしまうことがあるのだ
その通り。酔っぱらって記憶を無くして「あれ貸してくれるって言ってましたよね」なんて言われてるようでは、信用無くしますよ~。>自分
この作家さん、先週読んだ「あの日にドライブ」も、とても面白かったです。
2作続けてキタので、読み漁りモードに入ることにします。
かなり期待できそう。
ふくさん、こんばんは。
そんなに良かったですか!
私は最近読書から離れていたこともあるけど
キターって思える作家さんに出会ってないなぁ。
ふくさんとは読書趣向が似ていると思うので
私も近いうちに読んでみたいと思います♪
>ひろさん
ええ。僕としてはかなーり良かったですよ~。
なんだかしんみりしちゃいましたけど。
キターって作家さん、結構久しぶりかもです。
川端さん以来のヒットになれば良いんですが。
ひろさんとは本当に趣向が似てますよね~。
本多さんも読んでみたいところですー。