「私の話」 鷺沢萠
鷺沢さんが亡くなって、初めて読む作品。
先日「新刊が出たら必ず買っている」なんて書いていたものの、よくよく著作リストをみると、ぽろぽろと漏れがありました。
というわけで、昔読んだ本を読み返す前に、未読の本を買ってきました。
鷺沢さんの、1992年、1997年、2002年の、それぞれの時代を描いた私小説。
離婚の話や、父親の会社が倒産して経済的に困窮した話、祖母が韓国籍だということを知らずに育っていた話、どれもこれまでの著作で触れたことがある部分ですが、これまで以上にストレートな気持ちをぶつけているように思いました。
これまでのエッセイと同様、この私小説にも、鷺沢さんが、自分の一言一言に気をつかい、人が発する言葉に傷つき怒り感動する様子が記されていて、この人は本当に他者の痛みに敏感で優しい人なんだなあと感じます。
かたや、そういったことを感じない自分の日常を振り返り、反省しきりな気分にさせられました。
でも鷺沢さんの、そんな敏感さが、自ら命を絶たせてしまったのかなー、と考えたりしてしまいます。
自殺した作家の私小説というのは、存命中と同じような感覚で読むことは、きっとできないのだな思いました。